早く貴方にあいたい

私が少し皺が寄る眉間といつも以上に垂れ下がった目尻を捉えた途端堰を切ったように話し出した彼女、その瞬間に一番当たって欲しく無かった一抹の予感がみるみると確信に変わって行く

目線が泳がないよう口角を少しだけ釣り上げることを意識して、驚いたように大きな声を張り上げる

 

私では無かった そうでは無かったのだ

あの小封筒も小説も誘いも一瞬握り返した手も、何もシグナルでは無かった

あの大きな背中も太い腕もその視線も、いつか手に入る時が来るんだって何処かで期待していた

そんな淡い願望は悲壮な彼女の表情を見た瞬間悉く打ちのめされ、必死に取り繕う自分が惨めで浅ましくて可哀想で仕様がない

あの過剰に私に向けられていた視線の意味は、故にその本意を読み取るには簡単で、それでも私は気付かない振りでやり過ごしたかった 気付きたくなかった そこに意味は無いんだと思いたかった 分かりたくなかったのに

悔しい 虚しい 恥ずかしい

 

醜い自尊心と思い上がりを露呈された今だって諦めのつかないそんな私は、果たして本当に彼の事が好きだったのだろうか