バイト前

安堵からくる緩慢さと喧騒に飲み込まれ、微かな高揚感を携えている。
私達は其れ等を知っていて、何時もの他人の素振りをする。
半ば押し潰されそうになりながら、窓の外を眺めていると、携帯のイヤホンジャックから聴覚への刺激が欲しくなる。
さっき迄は無かった微かな揺れにより、未来ある命の数を知る。
「当日解答速報」と書かれたチラシを小脇に抱え、燻んだローファーが小走りに駆けて往く。
彼等と私達の間に流れるこの空気を、入れ替えるか入れ替えないべきか。
決断を迫られたその箱は一際大きく揺れている。